ある過ぎた日のこと

誰にでも　みえるようにと透明の
薄紅色のプラスティクの容器の中
砂糖水を満たし　ひと揃いの私を詰め込みました

本当の私より　よくみえる様に注意しながら沈め
簡単にほどけるシフォンのリボンを方結びに施し
絶対に触れられない様に　蓋は溶接してみました

どこまで行くかわかんない　薄っぺらい自己愛と
ちいさいまま育たなかったもうひとりのあたしと
ドレーンチェリーと ヴァニラエッセンスを添えて

砂糖水の中　無言で愛想笑いしながら
そのちいさいまま育とうとしない私に

いつまでいるの

と

やはり抑揚なく愛想笑いしながら

私はちいさなあたしの腕に爪を立てながらつぶやく

いなくなればいいのに

そして　ちいさなあたしも
しがみついている　私の背中に爪を立て
おそらく満面の愛想笑いをしながら私の
耳に柔らかな唇を押し付けてささやく

そだってほしくなかったくせに。

髪を撫でてもらうために
抱きしめられるために生まれてきたのに

溶接した容器はずっと
自分で開けようとしても開かなかったのですが
時間が経つにつれ腐食し　もろくなりはじめた様です
蓋も
薄紅色のプラスティクの容器も私も

私は　今から　元通りに
モウ一度新しい容器に砂糖水を満たして溶接するか
プラスティクを壊し砂糖水から出るかを選べる様です

今までどおりに糖水に沈み愛想笑いしながら
次に腐食する　何年後を待ってもかまわない

つまらなそうに　不機嫌な顔をしたまま
糖でべたべたの髪を洗い自分で撫でてやってもかまわない

そしてそのどちらでなくてもかまわないってことです



展示をさせて戴くことになりました。
2010年9月清水真理さんプレゼンツ
浅草橋　parabolica- bis　2Ｆにて。
１Fの展示はマンタム氏。
二部屋のテーマはリンクします。
詳細は追ってお知らせ致します。


†本日の愛らしいさん†
骨海月