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HP 〈あやさきんぎょ楼〉 * 綺朔ちいこ + illustration + 挿絵 http://ayasakingyo.com/ 新しいブログ〈あやさきんぎょ は 不思議?二匹目〉 http://ameblo.jp/ayasakingyo/
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そう、それはモウ10年以上前のことね。
貴方は渋谷の金物屋さんに、ひっそりと
薬缶や湯たんぽやほうきとともにいたの。

一目観て私、愛してしまった。
だって貴方。ぱっと観は大層ファンシーで
可愛らしい、とさえ思わせるその様子。
でも私にはすぐにわかったわ。

見返りながら斜に構えたあなたの瞳は、
まるで人生を悟りきったかのように虚ろに
そして儚げに空を見据えていることを。
体中に、点描をまとっているのがその証拠。

もちろん私はその後の喫煙人生を共に歩むことを誓ったわ。
日頃から煙草達は、独りで燃え尽きることが淋しいと
あるかなきかのささやかな聲で私に最期の言葉をしたため
天命を全うし 灰に還っていった。

貴方が来てからの煙草達はまるでなぐさめあうかの様に
儚い一縷の望みを胸に旅立って行った事、私は忘れない。
燃える一夜の恋を胸に港をあとにするマドロスの様だったわ。
一本の煙草に寄り添い心中してゆく一本の貴方。

ある日私はまた貴方を迎えに行く為
その金物屋さんを訪れたの。なんてこと。
金物屋さんは消えて、大きなビルを建てる為の
工事が始まっていた。大きなクレーン車を前に
途方に暮れてしまったわ。


月日は流れ、昨日、私はお友達のゆかちゃんと
二人で夕暮れの酒場でグラスを傾けていたの。

其処は以前に「こ」ちゃんに教えてもらった
素敵な昭和歌謡のビリケン酒場。
そこで私達は運命の再会を果たしたのよ。

そのお店のテーブル、おてもとの箱の隣に
貴方のあの瞳を見付けたと同時にお店の人に
一所懸命お願いしたわ、連れて帰りたいと。
生き別れの父に再会しても屹度
あんなにも必至にはならないでしょうに。

消息不明の貴方を探して東京のあらゆる金物屋さんへ
あのつぶらな瞳。あの頼りなげな面影を探した日々。
めくるめく友に所在を聞いて歩けど貴方。
忘れた頃に。こんなところで会えるなんて。
今でも胸がどきどきしてるくらいよ。


†本日の愛らしいさん†
東亞燐寸ひよこ印マッチ。
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プロフィール
HN:
綺朔ちいこ あやさきんぎょ
性別:
女性
職業:
イラストレーター。
趣味:
悪くないとおもう。
自己紹介:
特別な経験でも何でもない、よくある日々に包まれて、挿絵描きの「あやさきんぎょ」さんはとても幸せ。そんな様子と、イラストや写真などを。人知れず、密かにお贈りします。ちょっと小首をかしげる日常のお話しを。

*mail to*
ayasakingyo*hotmail.com
*→@









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